夜空に見るは灰色の瞳
「出汁巻きというと、叶井さんがお好きなやつですね。前に朝食で作ってくれた。あっ、その後、フライパンの使い心地はいかがですか?」
男が何か言う度に、大路くんはいちいち反応を示して、私を見たり男を見たり、思い出したように手元に視線を落としたかと思ったらピクッと肩が跳ねたりしていて忙しない。
そんな状態で、玉子の方は大丈夫なのだろうか。心配だ。
「あと、マットレスの方も。寝心地、全然違ったんじゃないですか?どうでした?」
「……まあ、そうだね。うん……」
“マットレス”という単語に、大路くんがギョッとしたように目を見開いてこっちを見るから、どうにも答えづらい。
マットレスって……と衝撃を受けたように呟く声まで聞こえてくる。
そんな風にして、気もそぞろに大路くんが焼き上げた出汁巻き玉子は、それでも流石と言うべきか、ちゃんと美味しそうに焼きあがっていた。
それを切り分けて皿に載せると、大路くんはカウンターの向こうから腕を伸ばす。
「綺麗な卵色ですね。叶井さんが焼いた物とは色のつき具合が全然違います」
目の前に置かれた出汁巻きを眺めて、男はまずそんな感想を漏らす。
果たして、私が作った物と比べる必要があっただろうか。
男が何か言う度に、大路くんはいちいち反応を示して、私を見たり男を見たり、思い出したように手元に視線を落としたかと思ったらピクッと肩が跳ねたりしていて忙しない。
そんな状態で、玉子の方は大丈夫なのだろうか。心配だ。
「あと、マットレスの方も。寝心地、全然違ったんじゃないですか?どうでした?」
「……まあ、そうだね。うん……」
“マットレス”という単語に、大路くんがギョッとしたように目を見開いてこっちを見るから、どうにも答えづらい。
マットレスって……と衝撃を受けたように呟く声まで聞こえてくる。
そんな風にして、気もそぞろに大路くんが焼き上げた出汁巻き玉子は、それでも流石と言うべきか、ちゃんと美味しそうに焼きあがっていた。
それを切り分けて皿に載せると、大路くんはカウンターの向こうから腕を伸ばす。
「綺麗な卵色ですね。叶井さんが焼いた物とは色のつき具合が全然違います」
目の前に置かれた出汁巻きを眺めて、男はまずそんな感想を漏らす。
果たして、私が作った物と比べる必要があっただろうか。