夜空に見るは灰色の瞳
「……あの時は、砂糖が多めに入ってから少し色がつき過ぎたの。それに、仮にもプロが作った物と比べないでよ」

「ああ、そうですね。プロと比べるのはプロに失礼ですよね。すみません、大路くん」

「え?……あ、いや……別に……」


突然の謝罪に、大路くんが困惑しているのが伝わってくる。


「……その“大路くん”っての、いい加減やめてもらえますか」

「だそうですよ、叶井さん」

「あなたに言ってるんですけどね」


男が不思議そうな顔で首を傾げると、それを見た大路くんは大きくため息をついた。


「あっ、叶井さん、よければお一ついかがですか?」


大路くんの盛大なため息をスルーして、男は私の方に皿を寄せる。


「……いいよ。私、茶碗蒸し食べてるし」


言いながら、スプーンで掬って見せたそれを口に運ぶ。
この男と大路くんとのやり取りに気を取られてしまっていたせいで、ちょっと冷めている。
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