夜空に見るは灰色の瞳

「まさかとは思うけど、大路くんと前に会ったことがあって、その時から何か因縁めいたものがあるとか、そういうことはないよね?」

「ないですよ。正真正銘、彼と会うのは今日が初めてです。前世まで遡るとどうだかわかりませんけど」

「……いや、前世までは遡らなくていいよ」


この男は魔法使いだからまだしも、大路くんに前世の記憶があったとしたらビックリだ。


「叶井さんは魔法使いを何だと思っているのですか?魔法使いにだって前世の記憶なんかありませんよ」


大路くんの店を出て、なぜか魔法使い男と二人、連れ立って歩く帰り道。
既にとっぷりと日が暮れたアスファルトの道を、街灯の光と時折通りかかる車のヘッドライトが照らしている。

その車の運転手、もしくは同乗者には、私達はどのように見えているのだろう。
全く知らない人であるとはいえ、変な誤解が生まれていたとしたら困る。

そんなことを心配しながらの帰り道、美味しい茶碗蒸しのおかげでゾンビのようだと言われるほどの疲れも多少は癒され、最終バスを逃しても歩いて帰れるほどには気力が回復したのだが、代わりに大いなる疑問が私の脳内を満たしていた。
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