夜空に見るは灰色の瞳
「さて、どこに行くかな」
「嘘でしょ……考えてなかったの?」
「元々ダメもとで電話したからな」
それにしたって、コンビニで待っている間に考える時間はあっただろう。雑誌なんて読んでいる場合ではない。
「あっ、じゃあ、わたしがお店を提案してもいいですか?」
天井にぶつからない高さで手を挙げる三永ちゃんを、大路くんはバックミラー越しに、私は横を向いて窺う。
視線が集まっても臆することなく、三永ちゃんは先を続けた。
「美味しい洋食屋さんがあるんです。ちょっとそこまでお昼を食べに、なんて距離ではないので、他の社員さん達と会う確率はかなり低いと思いますよ」
どうですか?と訊かれ、私はとりあえず大路くんの反応を窺う。
運転手は彼なので、まずは大路くんの意見を聞くべきだろう。
バックミラー越しに目が合って「叶井は?」と訊かれたので、私は全く問題ないことを伝えた。
三永ちゃんが紹介してくれるお店はまず間違いないので、反対意見なんてあるはずもない。