夜空に見るは灰色の瞳
「……あの男、前に店に来た叶井の知り合いだって男、あいつ――あの人は、ほんとにただの知り合いか?」


名前を呼んでから散々引っ張って焦らして急かすなとまで言ってためを作って、言いたかったことがそれか。

思わず、体から力が抜けるようなため息が零れる。
何かもっと重要な話、例えば、本当はお店の経営が上手くいっていないんだとか、そういう話だったらと一瞬でも心配した気持ちを返して欲しい。


「……何だよ」

「それはこっちの台詞。ほんと何なの?」


もう一つ、今度はこれ見よがしにため息をつくと、大路くんの表情がちょっぴり不機嫌そうに変わった。


「随分親しそうだったから、気になっただけだよ。悪いかよ。頻繁に家に出入りしてるようなことも言ってたし、なんだかんだ言って結局お前あの人に送られて帰ったし、ただの知り合いにそこまで気を許してんのはどうなんだって思ったんだよ」

「大路くんは私の保護者か。お父さんか」

「……そこはせめて兄だろ。一応同い年だぞ」

「大路くんが兄ってなんか嫌だ。弟なら我慢するけど」

「どういう意味だよ」


そのまんまの意味です。と返してから、水を一口。
そこに、三永ちゃんが頼んだサラダセットのサラダが運ばれてきたが、三永ちゃんはまだ戻ってこない。
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