夜空に見るは灰色の瞳
「それはどうも。……でも、大丈夫だよ。そんなに心配してくれなくても」


出会ってから日は浅いが、今でも得体が知れないことに変わりはないが、あの男はきっと悪人ではない。
いや、この場合は悪い魔法使いではないと言うべきだろうか。

何にしても、もしも悪い人ならば私はとっくにどうにかなっているだろうし、悪人にしては、あの男は正直過ぎるような気がする。

以前大路くんの店に寄って帰りが遅くなった時、実は既に部屋に入りましたなんて、言わなければ気付かないようなことを、あの男はバカ正直に白状していた。

それに、ウサギで癒しを与えてくれたり、欲しいと言った物を出してくれたりと、私のためになるようなことばかりしてくれてもいる。


「大丈夫って、何を根拠に言ってるんだよ」

「まあ……強いて言うなら、勘?」

「……ひとが真剣に心配してるのに、お前はふざけてるのか?」


大路くんは、呆れているような、でもちょっぴり怒っているような、どちらとも言い難い表情をしている。
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