夜空に見るは灰色の瞳
「別にふざけてないよ。でも大路くん、店で会った時もそうだったけど、妙にあの人に突っかかるよね。実は知り合い?」

「……いや、店で会ったあの時が初対面」

「……初対面の人に、あんなに突っかかっていってたの?大路くんらしくなかったし、私ならまだしも、あの態度は店員としてどうかと思うよ。あの人、一応お客さんだったんだし」


大路くんは気まずそうに、俯きがちに視線を逸らす。


「……あれは、まあ、俺もよくなかったと思ってる。反省してるよ。仮にもあの時はお客だったわけだし」


お客であるということを認めたくなさそうな口ぶりだが、それでも反省しているのは声の感じからして本当のようだ。


「とりあえず、この話はこれで終わりってことで。これ以上続けると、俺が居たたまれなくなりそうだ」

「……自分からその話題に持っていったくせに」


大路くんは、俯きがちに逸らしていた視線を私に戻すと、ふう……と小さく息を吐いた。
その吐息には、どことなく呆れが含まれているように聞こえた。
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