夜空に見るは灰色の瞳

「叶井さん、今日大路くんと食事に行きましたね?」

「……何で知ってるの」


今日も今日とて洗面台の鏡から登場した灰色の瞳の男は、夕飯を製作中の私の背中に向かって問いかける。
同じ色味の服を何枚持っているんだと問いたくなるくらい、今日も全身黒っぽい。


「仕事の帰りに、たまたま大路くんに会ったんです。そしたら突然、今日は叶井さんとランチに行ったって、訊いてもいないのに妙に得意げに語られまして。洋食屋さんに行ったんですよね」


なぜ大路くんはそんなことをこの男に、しかも得意げに語っているのだろうとは思ったが、それより気になったのは――


「魔法使いも、普通に仕事とかするんだ。ああそれとも、私達は知らないような、魔法を生かした特別な仕事?」

「いいえ。魔法使いがその存在を隠す必要もなかった大昔ならまだしも、現代では魔法が使えたところで食べてはいけませんから、普通に働いていますよ。会社員、もしくはサラリーマンというやつです」

「へー、魔法使いのサラリーマン」


そう表現すると、まるで漫画の登場人物のようだ。
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