夜空に見るは灰色の瞳
それにしたって……とは思ったが、まあ本人がいいのならそれでいいのだろう。

とりあえず、つみれのタネは完成したし、他の具も既に用意は出来ているので、あとは仕上げるだけだ。
そのタイミングで、振り返る。

テーブルを前にしてちゃっかり座ってくつろいでいる男は、灰色の瞳で真っすぐにこちらを見ていた。


「何です?あっ、手伝いですか?喜んで」

「いや、違う」


立ち上がりかけた男を制し、さっきからずっと訊こうと思っていたが、先送りにしていたことをここに来て問いかける。


「もしかしてさ、夕飯食べて行こうとしてる?」


私の問いに、なぜだか男はぱあっと顔を輝かせた。


「いいんですか!」

「……いや、いいんですかじゃなくて、私は食べて行こうとしてるのかって訊いてるだけで、よかったら食べていく?って言ってるわけでは」

「そうなるとやっぱり、僕はお手伝いをするべきですよね。働かざる者食うべからずですから」


そう言って男は、嬉しそうな顔でいそいそと立ち上がってこちらに歩いてくる。
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