夜空に見るは灰色の瞳
8 手土産とお礼
さて、今日はお休みだ。
何だか部屋の中が妙に薄暗くて、カーテンを開けてみたら天気は生憎のどん曇りで、今にも雨が降り出しそうだけれど、外出の予定がない私には関係ない。

朝ご飯は何にしようかな……と呟きながら、冷蔵庫を開ける。
きんぴらごぼうが入ったタッパーが目に付いたので、しばし思考したのち、それと卵を一つ手に取って冷蔵庫を閉める。
主食はご飯にしようかパンにしようかと悩みながら、食器棚から取り出した器に卵を溶いていると


「叶井さーん」


どこか遠くの方から、呼ぶ声が聞こえた。


「叶井さーん！」


続けざまにもう一度。

きっと無視していたら何度だって呼び続けるのだろうし、最終的に無断で侵入してくることは目に見えているので、ため息をつきつつ器と菜箸を作業台に置いて、洗面所に向かう。

開けっ放しのドアの横に立って鏡を見れば、普通なら私の姿が映るはずのそこに、予想通り灰色の瞳の男が映っていた。
どんよりとした空模様によく似合う、黒っぽい色でまとめた格好は相変わらず。
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