夜空に見るは灰色の瞳
「なに?」
最早何の驚きもなく問いかけると、男はまず「おはようございます」と笑顔で挨拶をした。
「実はついさっき、祖父から焼き立てのパンが届きまして。何でも、最近パン作りにハマっているらしく、今日は特に出来がいいそうなんです。そういうわけなので、よければ叶井さんも一緒に食べませんか?」
なんと、今日は予想外の手土産があるらしい。しかも焼き立てのパンとは、とても魅力的なワードだ。
でもすぐに頷くと調子付かせてしまうかもしれないので、考える素振りを見せてから答える。
「じゃあ、いただこうかな。せっかくだし」
嬉しそうに笑った男は、「ではまずこれを」と言って鏡から両腕を突き出す。
腕だけが鏡から飛び出しているこの状況は、トリックアートみたいというか、まあはっきり言って不気味だ。
以前顔だけ突き出ていた時も充分不気味だったけれど。
男が突き出した手に持っていたのは、パンがいっぱいに、これでもかと詰まったカゴ。
それを受け取ったところで後ろに下がると、空いたスペース目掛けて、男が鏡から出てくる。
毎度のことだが、洗面台をまたぎながらの登場はかなり不格好だ。
最早何の驚きもなく問いかけると、男はまず「おはようございます」と笑顔で挨拶をした。
「実はついさっき、祖父から焼き立てのパンが届きまして。何でも、最近パン作りにハマっているらしく、今日は特に出来がいいそうなんです。そういうわけなので、よければ叶井さんも一緒に食べませんか?」
なんと、今日は予想外の手土産があるらしい。しかも焼き立てのパンとは、とても魅力的なワードだ。
でもすぐに頷くと調子付かせてしまうかもしれないので、考える素振りを見せてから答える。
「じゃあ、いただこうかな。せっかくだし」
嬉しそうに笑った男は、「ではまずこれを」と言って鏡から両腕を突き出す。
腕だけが鏡から飛び出しているこの状況は、トリックアートみたいというか、まあはっきり言って不気味だ。
以前顔だけ突き出ていた時も充分不気味だったけれど。
男が突き出した手に持っていたのは、パンがいっぱいに、これでもかと詰まったカゴ。
それを受け取ったところで後ろに下がると、空いたスペース目掛けて、男が鏡から出てくる。
毎度のことだが、洗面台をまたぎながらの登場はかなり不格好だ。