夜空に見るは灰色の瞳
“可愛い孫よ、元気にやっているか?私はすこぶる元気だ。
どうやらあの人は、まだ私を迎えにくる気がないらしい。

天気が悪い日は畑に出られず暇なので、その暇を潰すためにパン作りを始めてみた。
これがまた何とも奥深く面白いもので、私はすっかり魅了されてしまった。

最近では天気に関係なくパンを焼いている。そして今日も焼いた。
そうしたらどうだ、売り物かと思うくらい上手く焼けたではないか。これは可愛い孫にも食べさせねばと、急いで転送した次第だ。

焼き立ての今が食べ時だ。すぐに食べるといい。

最初にも言った通り、私はすこぶる元気に楽しくやっている。
唯一悲しいことがあるとすれば、あの人が未だ迎えにきてくれないことだが、おそらくまだその時ではないということなのだろう。まあ、気長に待つことにする。

お前も元気で楽しくやっていることを願っている。

遠い異国の地から、お前を愛する祖父より”


「…………」


最後まで読んだところで、そっと便箋を二つに折り、黙って男に返す。
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