夜空に見るは灰色の瞳
「冷たいのでいい?あっためる?」

「冷たくていいですよ」


取り出したコップにお茶を注いで、テーブルに運ぶ。
そこでフォークを忘れたことに気が付いて再び戻ろうとすると


「任せてください、叶井さん!」


ここぞとばかりに男が声を上げ、手を台所の方に伸ばして何かを引っ張るような仕草をする。
すると、食器棚のカトラリーが入っている引き出しが勝手に開いて、そこからフォークが二本飛び出してきた。

もちろん、物凄い勢いで飛んで来たわけではない。
そんな、刺さったら命にかかわりそうな速度ではなく、ふわふわと穏やかに飛んで来て、テーブルの上に落ち着いた。


「便利だね」

「何かあったらいつでも言ってください」


テーブルの前に腰を下ろしたところで、カゴいっぱいのパンが目に入る。

持っていた時から思っていたが、それはまごうことなき焼き立てで、まだ熱くて、香ばしい香りがしていて、とても美味しそうだ。
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