夜空に見るは灰色の瞳
「凄いね……こんなのが家で作れちゃうんだ」

「祖父のことだから、魔法は一切なしの完全手作りだと思いますよ。あの人、そういう時に魔法を使うの嫌がるんです。日常生活だと些細なことでもすぐ魔法に頼るのに。例えば、目覚ましを止める時とか、靴下を履く時なんかも」


自分の好きなことに全力投球で、他はおざなりになってしまうタイプなのだろうか。
“偉大な”とか“天才”なんて呼ばれる人達は、そんなタイプが多いような気がする。


「祖母がいた時は、なんでもかんでも魔法に頼るのはよくないってしょっちゅう叱られていたんですけどね、今ではやりたい放題ですよ。そんな祖父に似たのか、母もすぐ魔法に頼るタイプだったみたいで、こっちは父によく注意されていたと祖父から聞いたことがあります」

「そうなると、あなたもそういうタイプってこと?」

「僕ですか?僕は、……まあ、……違う、とも言い切れないような感じのタイプです」


なるほど、そっちのタイプということか。


「待ってください、叶井さん!でも僕は、目覚ましくらいは自分で止めます。掃除とか洗濯とか、あと食事を作る際にちょっと使うだけで……」

「結構な場面で使ってるじゃない」


うぐっと男が言葉に詰まって黙り込む。
その間にクロワッサンを食べ終えると、続いてオムレツにフォークを伸ばす。

急いで作ったせいか穴が開いていて、そこからきんぴらのゴボウがはみ出している。突き出していると言ってもいい。
男の方に綺麗に出来た方を出したので、私の方は得に見た目がよろしくない。まあ、味の方は大丈夫だろうけれど。
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