夜空に見るは灰色の瞳
現在ロッカールームには私の他に誰も居ないとはいえ、かなり思い切った発言だ。
万が一にも今の発言が主任に聞かれていたら、間違いなく別室に呼び出される。

まあでも、彼女はそんなこと気にしないのだろうか。

若さゆえの怖いもの知らずか、それともただの性格か、どちらにしてもそんな風に思い切れる後輩の三永(みなが)ちゃんが時々羨ましい。
あと、その可愛らしい顔も同じ女としては大変羨ましい。

ちんまりした顔にパッチリ二重と長いまつげは、私としてはそこらのアイドルに引けを取らない可愛さだと思っている。

男性社員の間に密かなファンクラブまであるとかないとか聞いたことがあるが、あったとしても不思議ではない可愛さだ。

そんな三永ちゃんは、どこが崩れているのか私にはさっぱりわからないが、先ほどから熱心に化粧を直している。


「私には無理だな……。それやっちゃったら、次の日が怖い」


社会人としての自覚が足りないとか、責任感がないとか、そもそもギリギリに連絡を寄越すなんてどういうつもりなんだとか、他の人達に迷惑がかかるとは思わないのかとか、主任に言われそうなことは思い付くだけでもかなりある。
その中の幾つかは、今日のお説教でも言われたばかりだ。

思い出したら何だかどっと疲れてしまって、深いため息が零れる。
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