夜空に見るは灰色の瞳
「でもですね、叶井さん!僕は、苦手な部分を魔法で補っているというだけで、なにも生活の全てを魔法に頼っているわけでは」

「掃除と洗濯と料理って、それは最早生活の全てじゃないの?」


またしても、男はうぐっと言葉に詰まる。
その間に今度はロールパンを一つ取って、イチゴジャムを塗ってから口に運ぶ。

ふわふわと柔らかいロールパンも美味しいが、甘酸っぱいイチゴジャムも絶品だ。潰しきっていない果肉がごろっと入っているところに、手作り感を感じる。


「ん!叶井さん、このオムレツ美味しいですね。具は和なのにそれを包むオムレツな洋なので、和洋折衷の風を感じます」

「……それは良かった」


先ほどまで、バツが悪そうに視線を逸らしていたとは思えない表情の変わりようだ。

おまけに、わけのわからない風を感じて喜んでいる。
何だ、和洋折衷の風って。どんな風だ。


「そうだ、叶井さん。今日はこの後、何をする予定でした?」

「予定?」


特にないが、ここはあると答えておくのが無難だろうか。
< 190 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop