夜空に見るは灰色の瞳
「ないんですね。だったら、僕の買い物に付き合ってもらえませんか?と言うか、何を買ったらいいかアドバイスが欲しいです」


しまった。考えるより先に口に出しておくべきだった。


「……アドバイスって、あなたが何を欲しいかなんて私にはわからないんだけど」


生憎と私には、心の内を感じ取る能力はない。


「いえ、買いたいのは僕の物ではなくて、祖父へのお礼です」

「ああ、パンのお礼ってこと?でもそうだとしたって、私はあなたのお祖父さんの好みとかわからないし」


適切なアドバイスが出来るとはとても思えない。


「大丈夫です。正直言って、僕も祖父の好みはよくわかりません。あの人、よくわからない人なんです。祖父の好みを完璧に把握していたのなんて祖母くらいなので、最早この世界で祖父の好みを理解している人は一人もいません」


なんて寂しいことを堂々と言い切るんだ。しかもそんなの、大丈夫とは言えない。


「だからこそ一緒に選んで欲しいんです。アドバイスが欲しいんです!」

「……いやだから、アドバイスなんて出来ないって」

「じゃあ、隣に居てくれるだけでいいです!」


それは最早一緒に行く意味があるのだろうか。
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