夜空に見るは灰色の瞳
「お願いしますよ叶井さん。あっ、お昼ご飯ご馳走します!」

「食べ物で釣ろうとするな」


とは言っても、私もパンをご馳走になった身だ。私には関係ないなんてそんな薄情なことは言えないだろう。


「ちなみに、どこに行くかはもう決めてるの?」

「いえ、ちっとも。恥ずかしながら僕、普段は職場と家の往復しかしていなくて。休みの日もほとんど家から出ませんし。出かけると言っても気が向いた日の夜にちょっと空を飛びに行くくらいなので、どこに何があるのかさっぱりです。あっ、コンビニとスーパーの場所なら知っています」

「…………」


その、気が向いた日の夜にちょっと空を飛んでいた時に、私は運悪く遭遇してしまって今に至るというわけか。

遠い目をしてその時のことを思い出していると、男が思い付いたように「あっ!」と声を上げる。


「叶井さん、買い物はデパートに行きませんか?何度か上を飛んだことはあるんですけど、実はまだ中に入ったことがないんですよ。屋上で一休みしたことならあるんですけど」
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