夜空に見るは灰色の瞳
夜だと言っているのに、なぜか私の頭の中には夕暮れの屋上でカラスと並んでフェンスで一休みしている男の姿が浮かんだ。

カラスの間に魔法使いが挟まっている光景というのは、ちょっぴり見てみたい気がしないでもない。


「あそこって、色々あるんですよね?でっかい建物ですもんね。祖父が喜んでくれそうな物も、あそこならありそうな気がします」


そう言って、男はオムレツの最後の一口を口に押し込んで咀嚼し飲み込むと、「さて!」と意気込んで立ち上がった。


「では、片付けは僕が引き受けますので、叶井さんはどうぞ、出かける支度をして来てください」


私は一体いつの間に一緒に行くと言ったのだろう。そんな覚えはないのだが。


「まあまあいいじゃないですか、そんな細かいことは」

「……いや、大事なことだと思うんだけど。ていうか、家事が苦手な人に片付けを任せられるわけないでしょ」

「大丈夫ですよ、この手の魔法には慣れていますから。失敗したことは一度もありません」

「…………」


どうやらこの男、言っていた以上に魔法に頼った生活を送っているらしい。






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