夜空に見るは灰色の瞳
ギョッとして、またしても慌てて周りを見回すが、幸いなことに声が届きそうな所には誰もいない。

なぜ当人より私の方がドキドキしなければならないのか激しく疑問に思うところだが、さっきといい今といい、なんて運の良い男なんだ。


「迂闊に“ま”から始まるそれ関連の言葉を口に出さない!誰かに聞かれたらどうするつもりなの!」


もちろん、声を潜めて注意する。
ここで変に注目を浴びて、そこでまた男が迂闊なことを口走ったりしたらいけないから、怒気は込めるが声量は抑えめで。やってみると、これが中々難しい。


「えっと……すみません。あの、えっと……すみません」


なぜか二回も謝られた。表情の方にまで気を配る余裕がなかったので、相当怖い顔をしていただろうか。
まあこれが二回目であることだし、そりゃあ顔に力も入る。


「じゃあ、えっとあの……とりあえず、僕はこれを買ってきますね」


そう言って男は、激ソース全五種類が入った箱を手に取る。
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