夜空に見るは灰色の瞳
「……それだけだよ。それだけでも充分過ぎるよね」


三永ちゃんはちょっぴり納得いかなそうに首を傾げたものの「そうですね、充分過ぎると思います」と返して、また鏡に向き直ってくれた。

追及されなくて良かったと安堵しながら、私ものろのろと帰り支度を始める。

帰ったら今日こそは湯船に浸かろうか、それとも景気付けにちょっぴり豪華な夕食でも作ろうか、考えながら手を動かしていると、ロッカーがパタンと閉まる音がした。

視線を向けると、二つ離れたロッカーの前に立つ三永ちゃんが、帰り支度をバッチリ整えた状態でスマートフォンを操作している。

中々の手捌き、というか速さに、思わず感心してしまう。
けれど、それを眺めてばかりもいられないので、再び自分のロッカーに向き直って帰り支度を進める。

三永ちゃんのように化粧直しはしないから、鞄に物を詰めたらそれで支度は完了。ロッカーを閉めて鍵をかける。
そのタイミングで


「叶井さん、外まで一緒に行きましょー」


三永ちゃんが、スマートフォンを鞄にしまいながら近付いてきた。
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