夜空に見るは灰色の瞳
「おかえりなさい、叶井さん」
聞こえた声に返事もせず、洗面所の前を通り過ぎる。
部屋に入ったところでようやく足を止めて深く息を吐き出すと、洗面所の方から「叶井さーん?どうしたんですかー」と声が聞こえた。
無視して黙って部屋の入口に立ち尽くしていたら、「お邪魔しますよー?」と声がした。
そして次の瞬間、なぜか玄関のドアが勢いよく開く。
「叶井!ちゃんと話を聞け。お前は絶対何か誤解してる」
玄関のドアを勢いよく開けたのは大路くんで、ビックリして振り返った私の方に、彼は靴を脱いでずんずん近付いてくる。
しかしその途中、「よっ」とか「ほっ」とか聞こえた声に、大路くんは怪訝そうな表情で足を止めた。
そして、声が聞こえる洗面所の方を向いて、私が最近開けっ放しにしているドアの向こうを見て、大きく目を見開いた。