夜空に見るは灰色の瞳
「……なっ、……あっ……!!」


言葉にならない声を上げて洗面所を指差す大路くんに、私はとてつもなく嫌な予感がした。


「……あっ……」


そして聞こえたもう一つの声。


「……あ、あんた…………」


呆然とした様子でそう呟いた大路くんは、よろよろと後ろに下がった拍子に壁に後頭部をぶつけた。
ごんっとかなりいい音がしたけれど、痛みも気にならないくらい衝撃の方が大きいらしい。頭をぶつけたことに対するリアクションが一切ない。

そんな大路くんが驚愕の眼差しで見つめる先、洗面所からひょっこりと顔を覗かせて、灰色の瞳で私を見た男は


「どうしましょう、叶井さん。大路くんに見られてしまいました」


緊張感の欠片もない声音でそう言った。
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