夜空に見るは灰色の瞳
「……どうにも大路くんの感情はごちゃごちゃし過ぎていて上手く感じ取れないんですけど、どうやら僕というよりも、叶井さんに対して衝撃を受けているようなんですよね」

「……え、私?何で」

「……さあ?大路くんの心の内は今、とっちらかった部屋みたいな状態で、どこに何があるのかわからないような、足の踏み場がないような感じなんです」


チラッと大路くんの方を見ると、彼はまだ深く項垂れている。

大路くんをここまで気落ちさせるとは……私は知らぬ間に一体何をやらかしたのだろう。
ここは、とりあえず謝っておくのが正解だろうか。
いやでも、何が悪いのかもわからないのに謝るというのもどうなんだろう。

何かもっと具体的なことがわからないものかと男の方を窺うと、彼はまたジッと項垂れる大路くんを見つめていた。
もしかして、新たな何かが掴めそうなのだろうかと期待したが、それより先に、大路くんが深く息を吐きながら顔を上げた。


「叶井、俺…………」


聞こえた声は、大路くんのものとは思えないくらい弱々しい。
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