夜空に見るは灰色の瞳
「じゃあ胃もたれじゃないの」

「……胃、もたれ…………んー……胃もたれ……」


ハッキリ否定はしないけれど、違うと言いたげな口ぶりだ。


「……叶井さんと大路くんが、二人で楽しそうにしているとモヤッとするんです。でも、大路くんが叶井さんに“俺達は友達だ”って言ったのを聞いた時は、こう……嬉しいような気持ちになったんです」

「大路くんと私が友達だってことが、嬉しいの……?そこにあなたは含まれてないのに?」

「そこが謎なんですよね」


考え込み過ぎて段々と眉間に皺が寄っていく男を横目に、私は静かに立ち上がってキッチンに向かう。
温かいお茶を用意して戻ると、眉間の皺は更に深くなっているように見えた。


「一息入れたら?」

「あっ、すみません。ありがとうございます」


差し出したコップを受け取って、男は早速息を吹きかけてから口を付ける。
一口啜って一旦口を放すと、すぐにまたもう一口啜って、ほう……と息を吐いた。

その瞬間、深く刻まれていた眉間の皺が消える。
< 226 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop