夜空に見るは灰色の瞳
「叶井さんが淹れてくれるお茶は美味しいですね。ホッとします」

「水出しのお茶をチンしただけだよ。それだって、スーパーで安売りしてたティーバッグのやつだし」

「でも、美味しいです。お高いお茶の美味しさとはまた違った、温かい美味しさと言うのでしょうか」

「……そりゃあ、ホットのお茶だからね。温かいと思うよ」


そういうことではないんですよ。何と言うかこう……――と男は一生懸命説明しようとしてくれるが、よくわからなかったので聞き流した。

途中から私が聞き流していることに気付いた男は、説明を諦めてお茶を啜る。それに合わせて、私もお茶を啜った。

そうしてしばらく二人してお茶を啜ったところで、私は再び立ち上がる。
そして、こちらを見上げる灰色の瞳を見つめ返した。


「とりあえず、お腹が空いたから夕飯にしようと思うんだけど、何か食べたい物はある?」


その問いに、男は「えっ……」と零して目を見開く。


「いいんですか!?」


大げさなほどの驚きっぷりに、思わず笑ってしまった。


「どうせそのつもりだったんでしょ。何がいいの?」
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