夜空に見るは灰色の瞳
訊いておいてなんだが、冷蔵庫に食材が入っていたかどうか不安になったので、一足先にキッチンに向かう。
冷蔵庫を開けて中を確認していると


「えっと、じゃあ、玉子焼きがいいです!」


今度は私が驚く番だった。


「……玉子焼き?」

「はい!叶井さんが作った玉子焼きが食べたいです。あっ、甘くしてくださいね」


肉も魚も、野菜だってあるのに、今日はいつになく食材がある日だというのに、まさか玉子焼きがくるとは思わなかった。
卵もあるから別にいいのだけれど、何と言うか……予想外過ぎて、顔が笑ってしまう。


「私、出汁巻き派だって前に言ったよね」

「ええー!だって、僕がリクエストを訊かれたんですよ?」


わかっている。だって訊いたのは私なのだから。
それでもあえて言ったのは、ちょっとしたイタズラ心だ。


「でもあんまり甘くすると焦げるから、ほどほどにね」

「あ!じゃあ、そこは僕が魔法で上手くサポートします」


それはつまり、極限まで甘くしろと言うことだろうか。
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