夜空に見るは灰色の瞳
「あのさ」
「はい、何でしょう?」
卵液をかき混ぜ、フライパンに流し込む。それは以前男が作ってくれた、玉子焼き用のフライパンだ。
「あなた、のぞむって名前なの?」
玉子を焼きながらの問いかけに、男はコンロの火を見つめたままで答える。
「そうですよ。あれ、言っていませんでしたっけ?」
「聞いてないね」
一つ焼き終えたら、同じ工程をもう一度。
お互いに、お互いの仕事を続けながら、会話も続く。
「それはすみません。てっきり、もう言ったものと思っていました」
「まあ、そもそも、自己紹介し合うような出会い方じゃなかったからね。あなたの方は、初めから私の名前を知ってたし」
仕方ないと言えば仕方ないが、その後もチャンスがなかったのかと言われればそれは違う。
別に知らなくてもいいと思っていたし、知る必要もないと思っていたから、訊かなかったのだ。
「はい、何でしょう?」
卵液をかき混ぜ、フライパンに流し込む。それは以前男が作ってくれた、玉子焼き用のフライパンだ。
「あなた、のぞむって名前なの?」
玉子を焼きながらの問いかけに、男はコンロの火を見つめたままで答える。
「そうですよ。あれ、言っていませんでしたっけ?」
「聞いてないね」
一つ焼き終えたら、同じ工程をもう一度。
お互いに、お互いの仕事を続けながら、会話も続く。
「それはすみません。てっきり、もう言ったものと思っていました」
「まあ、そもそも、自己紹介し合うような出会い方じゃなかったからね。あなたの方は、初めから私の名前を知ってたし」
仕方ないと言えば仕方ないが、その後もチャンスがなかったのかと言われればそれは違う。
別に知らなくてもいいと思っていたし、知る必要もないと思っていたから、訊かなかったのだ。