夜空に見るは灰色の瞳
「なっ!?」
「あっ、おかえりなさい」
確かに玄関の鍵を自分の手で開けてから入ってきたはずなのに、なぜか部屋の中には今朝の男が居た。
私が電話を終えたところで「そういえば叶井さんはお急ぎでしたよね」と自ら進んで出ていったはずなのだが、私はその後確かに鍵をかけ、そしてたった今確かに鍵を開けて入ってきたはずなのだが、その男はテーブルの前にこちらを向いて座っていた。
「お勤めご苦労様です。まあ、まずは座ってくつろいでください。あっ、何か飲みますか?」
「……とりあえず、自分の家みたいにくつろぐのはやめてもらっていいですか。あと、何でここに居るんですか。そもそも、どうやって入ったんですか。……あっ、まさか、勝手に合鍵を……!」
「作っていませんよ。僕が何者なのか忘れてしまったのですか?叶井さん」
何者って不法侵入者だろう。
「違います」
「……勝手にひとの心を読まないでください」
「読んではいませんよ、感じただけです」
人好きのする笑みを浮かべて男は言うが、私は最早その笑顔に胡散臭さしか感じない。