夜空に見るは灰色の瞳
そんな二人から視線を外して、私は壁にかかった時計を見上げて時間を確認した。

今日は遅くなると伝えてあるので、以前のように探しに来たりはしないだろうが、あの迂闊さと緊張感のなさのせいで、どこかで何かをやらかしたりしていないか心配だ。

お祖父さんに彼のことを頼まれてしまった手前、テレビや新聞を騒がせるようなことは断じてあってはならない。


「用事でもあるのか?叶井。……その……約束、とか」


聞こえた声に視線を戻すと、こちらを見つめる大路くんと目が合った。


「ないよ、別に。何で?」

「ああ、いや……。やけに真剣に時計を睨んでたから」

「え、叶井さん、用事があるんですか?」

「だから、ないってば。……ていうか三永ちゃん、ここに来てまたビール?」

「ほんとはワインが飲みたかったんですけど、ワインはないって大路さんが言うからー」


三永ちゃんは、ちょっぴり拗ねたように大路くんを見る。

この二人、まだそんなに顔を合わせたことがないはずなのに、もう随分と打ち解けているようだ。

あの魔法使いと大路くんは馬が合わないけれど、どうやら三永ちゃんと大路くんは馬が合うらしい。
まあ、あんな荒れっぷりを見せつけられれば、慣れてきたころには大路くんの気も緩むか。
元々コミュニケーション能力が高い者同士であるというのも、理由の一つかもしれない。
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