夜空に見るは灰色の瞳
「まずはお友達から、なんて常套句もあるくらいなんです。別に、間違ってはいなかったと思いますよ。ただ、叶井さんが予想を遥かに上回るほどの鈍感さんだっただけで」

「それを見抜けなかったことが、俺の敗因か……」


大路が下を向くと、椅子に座る三永の位置からはその顔が見えなくなる。


「敗因って、もう負けは決定したんですか?」


姿は見えないが、先ほど顔が見えていた位置に視線を定めて問いかける。
しばらく無言の時間が流れた後、軽い衣擦れの音と共に、再び大路が顔を上げた。


「どうやらそうみたいでさ。知らん間に、叶井には彼氏が出来ていた……」


大路は、遠い目をして答える。それに三永は、むむっと眉間に皺を寄せた。


「やっぱり叶井さん、彼氏がいるんですね」


その相手に関する読みは見事に外してしまったけれど、大元の読みは外していなかった。
そうとわかれば、大路から更に彼氏に関する情報を引き出したくなるが、ここは我慢と三永はグッと堪える。

彼氏の存在を遠い目で語る大路に、更に語らせるのはあまりに酷だと思ったのもあるし、ここはやはり本人、つまり叶井の口から直接聞きたいと思ったのもある。
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