夜空に見るは灰色の瞳
三永の疑問はもっともで、大路自身もそれはわかっているから、苦笑が漏れた。


「更に幻滅させることになって申し訳ないけど、そこで告白出来ないのもまた、俺なんだよね。何度チャンスがあったところで、思いきれないんだよ」


ほんと、情けないよな……。と大路が言うので、三永はきっぱり「そうですね」と返した。


「わたしが話に聞いて勝手に抱いていたイメージの中の大路さんは、もっと男らしくて、チャンスがあったら絶対逃さないような人でした。実際、仕事ぶりはそうだったと聞いていましたし」

「……まあ、仕事となればね。そりゃあスイッチが入るから、チャンスは逃さないし、男らしい決断だって出来るよ」

「そのスイッチは、叶井さんの前では入れられなかったんですか?」


大路自身も何度となくそう思ったことがあるだけに、三永の問いは耳に痛かった。


「……叶井の前だからこそ、入れられなかったんだよ」


それはなぜか、言葉にして伝えるのは、とても難しい。

自分の中に渦巻くこの気持ちは、どんなに言葉を尽くしても、正確に三永に伝えることは出来ない。
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