夜空に見るは灰色の瞳
歴代の彼氏にも、彼氏とはいかないまでもいい雰囲気になりつつあった男性にも、ことごとくイメージと違ったという理由でフラれて来た三永には、もう慣れっこだった。
だから大路が


「まあ確かにイメージとは違ったけど、幻滅はしないよ。それで言ったら俺だってお相子だしね。それに俺は、三永ちゃんのその素の感じ、全然嫌いじゃないから」


そう言って笑った時、思わず目を見開いてしまった。
そんなことを言われたのは、初めてだったから。

おかげでしばらく反応に困って黙り込んでいた三永だが、大路がカウンターを出てドアを開けたところで、ハッと我に返る。

見れば、大路はのれんを下げていた。つまりは、もう店じまいということなのだろう。


「あっ、もう閉店の時間でしたか。すみません、長居しちゃって」


慌てて三永が腰を浮かせると、のれんをドアの横に立てかけたところで大路が振り返る。


「いや、時間はまだなんだけどさ。どうせ他にお客さんは居ないし、これから来そうな雰囲気もないから、早めの店じまい。三永ちゃんは、気にせずゆっくりしていってよ」


そうは言っても……と腰を浮かせた中途半端な状態のまま三永が逡巡していると、カウンター内に戻ってきた大路が、三永からは死角となっている下の方に手を伸ばし、何かを掴んで持ち上げた。

掲げて見せられたそれに、三永は驚いた後で、少しばかり唇を尖らせる。
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