夜空に見るは灰色の瞳
「今日は遅くなるから、探しに来なくていいって言わなかったっけ?」

「はい、聞きましたよ。だから探しに来たんじゃなくて、迎えに来たんです。夜道を女性が一人で歩くのは、危ないですからね」


そう言って彼は、向きを変えて私の隣に並ぶ。
並んで歩き始めたら、私の歩調は格段にゆっくりになった。

心配事がすぐ隣に居るならば、もう急ぐ必要はない。後は、隣に目を光らせておけばいいのだから。


「まさかとは思うけど、ここまで来るのに空を飛んだり、瞬間移動して来たりしてないよね?」

「もちろん、してないですよ」


何とも疑わしいが、確かめようがないので、ここは信じよう。


「明日は雨ですかね……」


突然の呟きに、ん?と聞き返す。
彼は、右手の人差し指を立てて空を指差した。


「月はおろか星すら見えません。これは、明日辺り一雨来るのではないでしょうか」
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