夜空に見るは灰色の瞳
「……なに」

「聞いてください。実は僕、心の内で思っていることが勝手に流れ込んでこないよう、感じ取る力の制御の仕方を身に着けつつあるんです!五回に一回くらいしか倒れませんし、その内二回は確実に制御出来ているんです」


得意げにそう言って、彼は胸を張る。
褒めて欲しくて堪らない子供みたいで、思わず笑ってしまった。

時折通りかかる車に乗っている人や、ほろ酔い気味に店から出てくる人から、果たして私達は、どんな風に見えているのだろう。

恋人ではない、でも友達と言うのも少し違和感があって、知り合いだと遠過ぎる。
こんな関係を、果たして何と呼ぶのだろう。

考えながら見上げた空には、月も星も出ていない。そこはあの日と同じように、一面雲に覆われている。
でも、視線を下ろす直前で、視界の端にぼんやりとした光を捉えた気がした。

もう一度顔を上げると、雲の向こう、まだ半分以上隠れてはいるけれど、確かにそこには月が見えた。

ぼんやりとした淡い光が、並んで歩く私と彼とを照らしている。


「そういえば、まだ今日の分を訊いていませんでした。叶井さん、何か僕にして欲しいことはありませんか?出来ないことも多いですが、それでも叶井さんのためなら出来る限りのことはする所存ですから、試しに何でも言ってみてください」
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