夜空に見るは灰色の瞳
「……それで、あなたはここで一体何をしてるんですか」

「その件に関しましてはこれから説明させていただきますが、その前に叶井さん、座ったらどうですか?立ちっぱなしは疲れるでしょう。ここは叶井さんのお部屋なのですから、好きにくつろいでください」

「…………」


なぜそれを不法侵入中の男に言われなければならないのかとは思ったが、このままでは話が進みそうになかったので、仕方なくその場に腰を下ろす。
ドアがすぐ後ろにあるので、いつでも逃げられる位置取りだ。


「叶井さん、ちょっと離れ過ぎではありませんか?」

「妥当な距離だと思います。で、一体何の用ですか。誰にも言わないで欲しいってことなら、頼まれなくたって言いませんよ。どうせ言ったって信じてもらえませんし」


その話をしに来たのだとしたら、言われずともわかっているので即刻お引き取り願いたいのだが、男は立ち上がる素振りすら見せない。


「そうですね。悲しいことに、現代では言ったところで信じてくれる人はいないかもしれませんね。でもまあそれはそれとして」


男が、ニッコリと笑う。
何も知らない人が見ればただの人好きのする笑顔だけれど、私にはそれが胡散臭い笑顔にしか見えない。

だからだろうか、何だかとても嫌な予感がした。
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