夜空に見るは灰色の瞳
「……魔法使いって、みんなそんな風に強引で自分勝手なんですか」

「さあ?それは性格にもよると思いますが、基本的には他人思いのはずですよ」

「……どこが」

「自分ではない誰かのため、そうやって他を思った時の方が、強い力が発揮出来ると昔から言われています。まあ本当かどうかはわかりませんけど。なにせ試してみようにも現代では――」


男が話している隙にスタスタとドアに近付いて鍵を開け、少しだけ開けたドアの隙間に体を捻じ込むようにして中に入り、すかさずドアを閉めにかかる。

けれどドアが閉まり切るより先に、隙間に入り込んだ男の手がドアを掴んだ。

男の人の手というのはごつごつと骨ばっている印象があるが、この男の手は指がすらっと長くて全体的にほっそりとしている。
一言で言うなら綺麗な手なのだが、今はそんなことはどうでもいい。


「危ないですよ、叶井さん」

「危ないのはどっちだ!いいから離してください」

「どうしてですか?僕、まだ入れてもらってないのですが」

「入れたくないっていうこの強い意思が何で伝わらない!!基本的に他人思いなんでしょ、なら思いやってくださいよ!」

「では思いやりの気持ちで言わせてもらいますね。そんなに大声を出すと、隣近所にご迷惑ですよ。ちなみにお隣さんは、叶井さんより一足先にご帰宅されています。先ほど僕は、ご挨拶しました」

「…………」
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