夜空に見るは灰色の瞳
「お疲れですか?叶井さん」

「……あなたのせいでね」

「それはいけません。そうだ!元気になる魔法をかけて、温かい飲み物でも作りましょうか。流石にこの時期になると、日が落ちれば冷えますしね」


そう言って、心なしか嬉しそうに家主である私より先に靴を脱いで上がり込んだ男は、スタスタと廊下を進んで慣れた様子で部屋の中に入っていく。

男が綺麗に揃えて脱いだ靴の横に放り投げるようにして靴を脱ぐと、私はのそのそと後を追いかけた。
最早、急ぐ気力もない。


「叶井さん、何がいいですか?」

「何もいらないので、我が物顔で歩き回るのをやめてもらっていいですかね」

「そんなつもりはありませんでしたけど、まあ知らない仲でもないですし、その辺は大目に見てください」

「……私達は知らない仲です。そこ、勘違いしないように」


仲良しだと思われては困るので、しっかり釘を刺しておく。
ちゃんと刺さったかどうかは、かなり怪しいものだけれど。
< 41 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop