夜空に見るは灰色の瞳
「では叶井さん、僕に何かして欲しいことはありますか?」
テーブルの前には男が居て、私はそこから距離を空けて、男が頑張って腕を伸ばしても届かない位置に座っている。
魔法使いにその対応はあまり意味がないとは言われたけれど、気持ち的には離れていた方が安心だ。
「ちなみに、死んだ人を蘇らせたいとか、時間を戻したいとか、未来を見に行きたいなんてお願いは聞けませんのでご了承ください。そういうのはかなり高度な魔法になりますし、失敗率も高いうえに失敗した時のリスクもありますから。それに禁忌でもありますので、やったら最後僕は危険魔法使い認定されて、死ぬまで叶井さん達が言うところの警察のような組織に追いかけ回されることになります」
「……へえー」
真面目な顔でそんなことを語られても、内容が内容だけにちっとも現実味を感じない。
そもそも、未だにこの男が魔法使いであるということを受け止め切れていないので、そのせいで現実味が湧かないというのもある。
「ですから、出来るだけ大掛かりにならない感じでお願いしたいですね。……あっ!空とか飛んでみたくありませんか?」
「……命を預けられるほど、あなたのことを信用してませんから」
「じゃあ……あっ!とっても人気者になれちゃう魔法とかもありますよ」
「……結構です」