夜空に見るは灰色の瞳
思わずため息をついたら、「ああ、そうだ」と男は何かを思い出したように手を打って立ち上がった。
突然のことに、私はギョッとして男を見上げる。

指がすらっと細いことからもわかる通り、この男は全体的にすらっとしている。
手足も長くて、高過ぎるというほどもないが、そこそこ上背もある。


「お詫びを忘れるところでした。魔法をかけた物を摂取するのは嫌だとのことでしたので、そうなるとやはり、疲れの回復には癒しですかね。叶井さん、動物はお好きですか?」

「……動物?」

「はい、動物です。癒しの代表格です」


確かに動物は癒されるが、それは種類にもよると思う。


「……ぬるっとしてたりぬめっとしてたりするのと、鳥以外なら……好き、かな」


あと、目がギョロギョロしている動物も、あまり得意ではない。
遠くから見ている分にはいいのだが、近くに寄ってこられると怖いのだ。


「なるほど、よくわかりました。では、ちょっと待っていてください。今準備しますので」

「……準備?準備って何の――」


言いかけて、話の流れから浮かんだ答えに慌てる。
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