夜空に見るは灰色の瞳
「んー……大きさ的には湯船がベストなのですが、これから水を溜めるとなると時間がかかりますからね。となると……」

「あっ、ちょっと、うろちょろするな!!」


呟きながら歩き出した男の後を慌てて追うと、男は風呂場を出たところで部屋には戻らず、今度は先ほど開けなかった方のドアを開けて中に入っていく。


「うん、これでもいいですかね」


男の前には洗面台。その右側にはもう一つドアがあって、そこはトイレになっている。


「叶井さん、こちらの洗面台、お借りしてもいいですか?」

「……洗面台で何をする気ですか」


それはですね、と男は排水口に蓋をしてから、蛇口を捻って水を出す。


「後でのお楽しみです。とりあえず、水が溜まるまで待っていてください」


そう言って、それ以上は何も言わず、男は洗面台に水が溜まっていく様子を、どこか楽しそうに眺め始めた。
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