夜空に見るは灰色の瞳
「……どうなって…………」


何の変哲もない洗面台、そこに溜まった水に、まるでテレビのように映像が映っていた。
よく見ると、“ふれあい広場はこちら”と矢印付きで書かれた看板がある。


「今映っているのは、ここから一番近い所にある動物園のふれあいコーナーですよ。ここには、ヤギとヒツジとポニーと、それからモルモットとウサギが居ますね」


男の言う通り、映像にはヤギとヒツジの姿があり、端の方にはおそらくポニーの尻尾と思われるものも見切れている。
ここから一番近いという話だが、私は訪れたことがない場所だ。


「まあでも、ヤギとヒツジとポニーは大き過ぎて洗面台だと通れませんから、今回はウサギかモルモットにしておきましょう」


言いながら男は、「ちょっと失礼します」と水の溜まった洗面台に両腕を突っ込む。
かなり思い切りよく腕を入れたのに、水滴が飛び散ることもなければ、腕を入れた分水面が上昇することもない。

そのままどんどん奥まで手を入れていくが、洗面台がそんなに深いわけもないので、これにまた目を見張る。
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