夜空に見るは灰色の瞳
「なっ、なっ、なっ、ど、……っ!?」

「落ち着いてください叶井さん。ウサギは抱っこを嫌う動物だと言われていますが、この子はそうでもないみたいです。むしろ人間の温かみはとても落ち着くと言っています」

「わかるの!?」

「動物と心を通わせられない魔法使いなんて、魔法使いじゃありませんよ。猫とかカラスがいい例です。魔法使いと言えばでしょ?」

「常識でしょ?みたいに言われたって知らないからそんなの!」


それに、どちらかと言うと猫やカラスは魔女と言えばという感じだ。


「何でもいいですから、とにかく早く抱っこしてください。ウサギも待っています。ほら、片手は胸元の方に、足も掴んでしまうといいですよ。ぶらぶらするのは落ち着かないそうです。あとは、もう片方をお尻に添えて。そんなにビクビクしていると、ウサギが安心して身を任せられないじゃないですか。そのまま自分の胸元に引き寄せて抱っこしてください。いいですか?離しますよ。何があっても落としたりしないでくださいね」

「変なプレッシャーかけないで!」


ゆっくりと、男の手が離れていく。
それと同時に、ウサギの重みがずっしりと腕に伝わって、緊張に体が強張った。
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