夜空に見るは灰色の瞳
「抱き方はいまいちだけど撫で方はまあまあだと言っていますよ。良かったですね、叶井さん」

「……それって褒められてるの?」


何とも複雑な気持ちで、ウサギの鼻筋を撫で続ける。
どこもかしこもモフモフで、柔らかくて、気持ちがいいしとっても可愛い。


「……黒いウサギって、珍しいよね。私初めて見た」

「そうですね。だからこの子は、とても人気があるそうですよ。ああでも最近は、新入りのロップイヤーと人気を二分しているそうで、一番でないのは悔しいと言っています」

「……ねえ、それほんとにウサギが言ってる?ウサギにそんな概念ある?」

「ウサギをバカにするのはよくないですよ。ウサギって、とても頭のいい動物なんですから」

「バカにはしてない。あなたを疑ってるだけ」


膝の上にずっしりした重みと、命の温かさを感じながら、主に鼻筋を、時々モフモフのお尻や脇腹の辺りを撫でる。


「あー……可愛い」


もう遠い昔のことなので既に記憶が定かではないが、確か小学校の遠足の時には、ふれあいコーナーに入ったはいいもののすばしっこく逃げ回るウサギを捕まえることが出来なくて、モルモットばかり撫でていたような気がする。

けれどこのウサギはビックリするほど大人しいので、膝の上に温かみを感じなければとってもリアルな置物のようだ。
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