夜空に見るは灰色の瞳
「ほんとに可愛いな……癒される」

「確かに、叶井さんは先ほどよりだいぶ表情が和らいでいますね。やはり、動物の癒し効果は絶大です」


そもそもに、顔が強張った原因はウサギを急に渡されて慌てたからなのだが、まあそれは言わないでおこう。今はそれより、ウサギのモフモフを堪能したい。


「ところでこれって、時間制限とかあるの?」

「そんなものはありません。僕を舐めないでください。でも、居ないことがバレたら面倒なので、誰かに気付かれる前には戻したいと思っています」


別に舐めてはいないが、何にしろあまり長く留め置くことは出来ないということか。


「そっか。じゃあ、今度はちゃんと動物園に会いに行くからね。そしたらまたモフモフさせてね」


大人しく膝に乗っているのをいいことに、包み込むようにして抱きしめてみる。
顔にモフモフの毛が当たって、くすぐったいけれど気持ちいい。

でも流石にそれは嫌だったのか、ウサギがぶるぶると頭を振ると、その時勢いよく振られた耳がバチンと顔に当たった。
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