夜空に見るは灰色の瞳
「痛い……けど可愛い……」


痛さよりも可愛さが勝って目を細める私をチラッと見てから、ウサギは男の方を見上げる。


「もういいかと訊いています。こうしている間にも、ロップイヤー人気が高まっていそうな気がすると」

「…………」


それは本当にこのウサギが言っているのだろうかと疑問に思ったが、まあ帰りたそうなのは何となく伝わってくる。膝の上で、落ち着かなげにそわそわしているのだ。

名残惜しいけれど仕方がない、動物園のふれあいコーナーに行けばまた会える。


「じゃあ、最後にひとモフ」


触っていて一番気持ちが良かったお尻の部分をモフモフさせてもらったところで、手を放す。
いいよ。と見上げたら、男がそっと手を伸ばして、慣れた様子でウサギを抱き上げた。

膝の上から温もりと重みがなくなると、ひんやりとして何だか寂しい。
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