夜空に見るは灰色の瞳
後で気付いたのだが、おそらく男は頬を撫でたのではなく、位置を確かめていたのだ。
そして良き所を見つけると、男は触れていた私の頬を思いっきり摘まんだ。遠慮も容赦もなく摘まんだ。


「いっ!?ちょっと、痛い!何するのよ!!」

「痛いということは、夢ではないということです」

「急に摘まむな!!あと力加減!絶対おかしいでしょ」


男の手を振り払いながら身を引いて、洗面台の鏡で確認したら、摘ままれた所が赤くなっている。


「真っ赤になってるじゃない!」

「では反対側も摘まみましょうか。それでバランスが取れますよ」

「そんなことでバランス取らなくていい!!」


伸びてくる男の手を今度は避けて、逃げ場のない洗面所から脱出する。

全く、思っていた以上にとんでもない奴だ。でもこれで、夢オチの可能性は消えた。
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