夜空に見るは灰色の瞳
「だから、違うんだってば。誤解なの」

「わたしと叶井さんの仲じゃないですか！教えてくださいよー」

「教えるようなことがないの！」

「そんなにも必死に否定するということは、これはどうやら職場恋愛の線が濃厚のようですね。一緒に働いているわたしには知られたくない相手であると……」

「何でそうなるの！？」


同僚や先輩や後輩、はたまた上司の名前を挙げて反応を見てくる三永ちゃんから、逃げるように出口へと向かう。

聞く耳を持ってくれないのなら、一旦置き去りにするしかない。
時間が空けば、きっと三永ちゃんも少しは冷静になってくれる……はず。


「あっ、逃げるなんてずるいですよー叶井さん！」


三永ちゃんが、ガチャガチャと慌てて使っていた道具をポーチにしまう音が聞こえたので、この隙にと足早にトイレを出る。

このまま急いでロッカールームに向かい、鞄を掴んで外に出れば逃げ切れるだろうか。

全くもう勘弁して欲しい。良いことに男が関わっていること自体は間違っていないが、それは断じて彼氏などではない。

大変信じ難い話だが、その男はどうやら本物の魔法使いなのだ。

実際にこの目で空を飛んでいるところや魔法を使うところを見ているので、いくら信じ難くともその存在を否定することは最早出来ない。

まあ魔法使いであること以前に、私にとっては部屋の前で待ち伏せされたり勝手に部屋に上がり込まれたりと、迷惑行為しかしてこない大変迷惑な男ではあるけれど、何にしても彼氏ではない。
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