夜空に見るは灰色の瞳
「……笑いながら言うってことはさ、ほんとはわかりやすいって思ってるんでしょ」

「まあ、わかりにくくはないな」


なんて回りくどい。


「んで、ご機嫌な理由を俺は訊けばいいのか?それともそっちから話すのか?」

「訊かなくていいし、こっちからも話しません」


割り箸で出汁巻き玉子を割りながら、素っ気なく答える。


「なんだ、それを聞いて欲しくて来たんじゃないのか?」

「無性に出汁巻きが食べたくなっただけ。あと、知らないうちに大路くんの店が潰れてないかの定期チェック。営業部の部長に、大路くんが仕事に困ってそうだったらすぐに教えて欲しいって言われてるのもあるから」

「あの人まだ諦めてないのか。でも残念ながら好調だよ。おかげさまで開店当初の赤字営業からは脱せたんで、めでたくアルバイトも雇ったしな」

「へー、うまふやれへるんは」

「食べながら話すなよ行儀悪いな」


とてもお客に対する態度とは思えないのだが、まあ知らない仲ではないので大目に見よう。行儀が悪かったのは本当だし。
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