夜空に見るは灰色の瞳
「まあ、あれだ。できちゃ――のところはなかったことにするとして、ほんとに彼氏じゃないのか?結婚でも?」


念を押すような大路くんの問いかけに、若干うんざりする。


「ないから。あと大路くん、私に梅酒。そうだな……ロックで」

「……お前、やっぱり何かあっただろ」


強いか弱いかで言ったら断然お酒に弱い私は、普段は飲酒を控えている。
職場の集まりなどでは最初の一杯だけ。大路くんの店でも、最早数えきれないほど来店しているけれど、お酒は数えるほどしか飲んだことがない。

私がお酒に弱いことも、だからこそ控えていることも知っている大路くんは、驚いた様子ではあるけれど、一応準備はしてくれる。


「私、ロックって言ったんだけど」

「お前はロックを飲んでいいタイプの人間じゃない。今日はちょっと冷えるから、お湯割りにしとけ」

「お客の注文を無視するのか」

「店主の優しさだ」
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